国道311号線を富田川沿いに本宮方面に向かう途中に市ノ瀬という集落がある。右手の南岸の小高い丘に白いダルマ像が見えてくる。市ノ瀬橋を渡り、細い道を上がりきった所にそのダルマ像で有名な興禅寺がある。創建は約300年前と言われているが、観音堂を新しく造った際に古い瓦を調べると、鎌倉、室町時代のものがあり、かなり古くからこの場所には何かが建てられていたようだ。ここからの眺望はなかなか素晴らしく、田んぼや畑が広がっていて、富田川も見える。もしかして、戦国時代には見張り台として使われていたかもしれない。正式には大雄山興禅寺と言い、臨済宗妙心寺派の禅寺である。

 

 

白いダルマ像は1972年

 白いダルマ像は1972年に故吉田啓堂和尚が創建したもので、大きさは座った像としては日本一と言われている。吉田啓堂氏は若いころは中学校教諭などを兼任していたが、健康に支障が出てきたことから、住職に専念する決意をし、教員を退職するとすぐに東南アジアに何度も行き、遺骨収集をした。現地で兵士の骨や砂を集め持って帰り、コンクリートと混ぜて、近くで造園業をやっていた故稲田泰男氏と一緒にこの日本一のダルマ像を造った。大戦で亡くなった方々への供養とともに、世界の平和を祈ることが氏の願いであった。寺の左側に玄関があり、上を

見上げると駕籠がつられている。これは近くの竜松山に城を構えていた殿様、山本主膳守が乗ったものである。裏庭にはつつじやサツキ、シャクナゲがたくさん植えられている。これは吉田氏が住職として赴任した当時、格式はあったが荒れ果てさみしかったお寺に一般の方々が来てくれるようにという願いで造ったものである。かなり広い庭なので一見の価値がある。

 

 

馬のお墓がある

 その上の観音堂の横には馬に乗った良遂宗真和尚の像があるが、約300年ほど前に”興禅寺号”という馬がかつて寺で飼われていて、まるで忠犬ハチ公のように、主人の和尚が亡くなった後、悲しみのあまり何も食べずに死んでいったという話が残されている。上にある墓地の一角に和尚の墓と興禅寺号の立派な墓石が残されている。

 おすすめは花が多く咲く4月から5月だが、秋の紅葉の時期も良い。ぜひ、眺望も素晴らしいダルマ寺を訪れてみてください。すぐ下には吉田啓堂氏が隠居していた龍眼堂もあり、知潤苑という苔庭も拝観できる。

 

 

上富田町ホームページリンク(興禅寺)http://www.town.kamitonda.lg.jp/kami50/kami53/kami53.html